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労災事故~落下物・崩落物に当たった事故【弁護士が解説】
下川絵美
下川法律事務所のホームページをご覧いただきありがとうございます。 当事務所は、広島に地域密着で、個人法務(離婚・相続・交通事故・労働災害・借金問題等)から、企業法務(予防法務・企業内トラブル・企業間トラブル等)まで、幅広い分野の案件を取り扱っております。 様々な法的分野のお悩みを抱えている方のお力になれるよう,所員一同,全力でサポートいたします。 広島で,法律トラブルを抱えておられる方は,お一人で悩まず,お気軽にご相談いただければと思います。

「落ちてきた(飛来してきた)ものに当たって怪我をした」という飛来・落下による労災事故は、例年一定程度発生しており、場合によっては重症化してしまうこともあります。

飛来・落下による事故は、製造業、建設業、林業、運送業等の現場でみられる類型の事故です。
例えば、

  • クレーン車を操作中に、吊り下げていたリングが落下して足を挟まれた。
  • トンネル工事現場において、はく離した岩石が落下してきた。
  • トラックの荷台に積んであった角材が、固定ベルトを外した途端に落下してきた。
  • フォークリフトで荷降ろし作業をしていたところ、荷物が落下してきた。

といった事故があります。

このように、高い位置から物が落下してきた場合、その衝撃は激しく、重傷を負ったり、お亡くなりになってしまったりすることもあります。

そこで、このような飛来・落下による事故に遭ってしまった場合にどのような対応をすればよいのかについて解説します。

労災申請から始める

飛来・落下による事故に限らず、労災事故によって重傷を負ってしまった場合には、怪我を治療する費用や今後の収入に対する不安が大きいかと思います。

このように、業務上の災害によって負傷してしまったときには、治療費や収入面の負担を軽減するためにも、労災申請をすることが重要です。

労災認定がされると、以下の労災保険給付等を受けることができます。

・療養(補償)等給付

労災指定病院などの指定医療機関等で、無料で治療や薬剤の給付を受けることができます。指定医療機関等以外の医療機関で治療等を受けたときには、一旦立て替えた費用の給付を受けることもできます。
怪我の治療費は基本的には療養(補償)等給付によって支払われるため、ほとんどの場合、治療費の心配はなくなるでしょう。

・休業(補償)等給付

労働災害が原因となった負傷や疾病による療養のため労働することができず、そのために賃金を受けていないときは、休業第4日目から休業(補償)等給付と休業特別支給金が支給されます。支給額は次のとおりです。

休業(補償)給付=(給付基礎日額の60%)×休業日数
休業特別支給金=(給付基礎日額の20%)×休業日数
休業(補償)等給付の支給を受けることにより、収入に対する不安が軽減されるでしょう。

・障害(補償)等給付

労災事故が原因となった負傷や疾病が治ったとき、身体に一定の障害が残った場合には、障害(補償)等給付の支給を受けることができます。ここでいう「治ったとき」とは、健康時の状態に完全に回復した状態のみではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態をいい、労災保険では「治ゆ」(症状固定)といいます。

障害(補償)等給付の対象となる一定の障害は、障害等級表に掲げられている障害等級(第1級から第14級)に該当する後遺障害であり、認定されると、等級に応じた障害(補償)等給付の支給を受けることができます。

・遺族(補償)等給付、葬祭料(葬祭給付)

労災事故が原因でお亡くなりになった被災労働者の遺族に対し、遺族(補償)等給付が支給されます。
遺族(補償)等給付には、遺族(補償)等年金と遺族(補償)等一時金があります。

遺族(補償)等年金は、被災労働者の死亡当時、その収入によって生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹が受給資格者となりますが、妻以外の遺族については、被災労働者の死亡の当時に一定の高齢または年少であるか、一定の障害にあったことが必要とされています。

遺族(補償)等一時金は、被災労働者の死亡の当時、遺族(補償)等年金を受ける遺族がいない等の場合に、被災労働者と一定の身分関係にある遺族が受給権者となります。

また、葬祭を行った遺族等に対しては、葬祭料(葬祭給付)が支給されます。

会社等に対する損害賠償請求の検討

前述のように、労働災害であることが認定されると、療養(補償)給付等の労災保険給付を受けることができ、治療費等の負担が軽減されます。

しかし、労災保険給付では慰謝料は支給されません。また、労災事故に遭う前の収入と同等の保険給付が支給されるわけでもありません。

労災事故の発生に勤務先の会社等の責任がある場合、労災保険によって支給されない慰謝料等の損害は、当該会社等に対して請求していくことになります。

勤務先の会社に対して請求することができる根拠としては、以下のものがあります。

・債務不履行責任

使用者である会社には、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等への安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務(安全配慮義務・労働契約法5条)があります。この安全配慮義務に違反して労災事故が発生し、労働者が負傷してしまった場合には、使用者である会社は債務不履行責任(民法415条)を負うことになります。

なお、労働契約関係にない元請等についても民法1条2項に基づいて安全配慮義務を負うことがあります。

・一般不法行為責任

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた責任を負います(民法709条)。

勤務先の会社に対して債務不履行責任を根拠として損害賠償請求をする際に、一般不法行為責任もあわせて主張することもあります。

・使用者責任

ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負います(民法715条・使用者責任)。そのため、他の従業員のミス等の行為によって労災事故が発生してしまった場合には、当該従業員個人に対してのみならず、被用者である会社に対して使用者責任を根拠に損害賠償を請求することができる可能性があります。

・工作物責任

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならないとされています(民法717条1項・土地工作物責任)。
「土地の工作物」とは、「土地に接着して人工的作業をなしたるによりて成立せる物」をいうとされています。工場内の機械については、その大きさや設置状況等によって「土地の工作物」に該当する可能性もあります。

会社等に対する損害賠償請求の流れ

勤務先の会社等に対する損害賠償請求をするためには、治療や後遺障害の認定が終わった後に、労働局に対して保有個人情報の開示請求を行う等により、資料を収集します。
その後、収集した資料をもとに、勤務先の会社等に対する損害賠償請求の可否や損害賠償額を計算します。
損害賠償額を計算したら、勤務先の会社等に対して、書面等により、損害賠償を請求します。

もっとも、勤務先等の会社等に対して損害賠償請求をしても、そのまま損害賠償金を支払ってくれることは少なく、会社側から「安全配慮義務は尽くしていたので会社に責任はない」とか「労災事故が発生したのは被災労働者の落ち度によるものだから会社に責任はない」等何らかの反論をされることが多いです。

このような会社等の反論に対しては事故状況を分析し、法的な根拠に基づいた再反論をすることが重要です。

飛来・落下による労災事故のケースにおける会社等の責任の一例は次のとおりです。
・クレーンを運転する資格を有していない者がクレーンを操作していたのを黙認していた。
・クレーンの滑走による危険を防止するために走行ブレーキを取り付ける必要があったのに、これをしなかった。
・落盤・落石による損害防止のための万全の措置として、早めに支保工を搬入し、事故現場一帯の岩盤に装着すべきであったにもかかわらず、これをしなかった。

損害賠償金の支払いについて、勤務先の会社等との間で示談が成立して解決となることもあります。しかし、示談が成立しなければ、労働審判や民事訴訟等の方法により、勤務先の会社等に対して損害賠償を請求することになります。

ぜひ一度ご相談ください

飛来・落下をはじめとする労災事故に遭って負傷してしまった場合、まずは労災申請をしてしっかりと治療等をすることが重要です。

一方、労災保険からは慰謝料等の支給はされませんので、怪我によって被った損害を可能な限り回復するためにも、勤務先の会社等に対する損害賠償請求を検討しましょう。

もっとも、これまで労働災害に遭ったことがないという方も多く、具体的にどのように進めればいいのか分からないという方もたくさんおられるかと思います。

労災問題に精通している弁護士にご相談いただければ、個別の事案に即した具体的なアドバイスを受けることができます。
また、法的な根拠に基づいた主張や反論が必要な勤務先の会社等に対する損害賠償請求についても、弁護士に依頼をすれば、代わりに請求してもらうことができます。

飛来・落下をはじめとする労災事故に遭われてお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。