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労災でご家族を亡くされた方へ
下川絵美
弁護士法人晴星法律事務所のホームページをご覧いただきありがとうございます。当事務所は、広島に地域密着で、個人法務(離婚・相続・交通事故・労働災害・借金問題等)から、企業法務(予防法務・企業内トラブル・企業間トラブル等)まで、幅広い分野の案件を取り扱っております。 様々な法的分野のお悩みを抱えている方のお力になれるよう,所員一同,全力でサポートいたします。 広島で,法律トラブルを抱えておられる方は,お一人で悩まず,お気軽にご相談いただければと思います。

はじめに

労災事故が原因で被災労働者がお亡くなりになってしまった場合、ご遺族の悲しみは筆舌に尽くしがたいほどです。そのような中で、ご遺族の今後の生活への不安も大きく、これからどのようにすればいいのか分からないという方も多いかと思います。

労災事故が原因で被災労働者がお亡くなりになった場合、労災保険から遺族(補償)給付等の支給を受けることができます。

労災保険からの給付で全てが補償されるというわけではありませんが、ご遺族の今後の生活の負担を少しでも軽くするためにも、労災申請をしておきましょう。

労災による死亡事故で遺族が受けることができる労災保険給付

労災事故によって被災労働者が死亡した場合に、ご遺族が受けることができる労災保険給付には、遺族(補償)等給付と葬祭料(葬祭給付)があります。

遺族(補償)等給付

業務中の事故や通勤中の事故が原因で被災労働者がお亡くなりになった場合、労働者のご遺族は遺族(補償)等給付の支給を受けることができます。

遺族(補償)等給付には、遺族(補償)等年金と遺族(補償)等一時金があり、それぞれ受給資格者が定められています

⑴遺族(補償)等年金

遺族(補償)等年金は、被災労働者の死亡当時、その収入によって生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹です。もっとも、妻以外の遺族については、被災労働者の死亡の当時に一定の高齢又は年少であるか、一定の障害の状態にある場合でなければ受給資格者とはなりません。なお、共働きの場合も、「収入によって生計を維持していた」に該当しえます。また、配偶者については、入籍をしていないいわゆる事実婚の状態にあった方も含まれます。

受給権者となる順位は次のとおりです。
①妻または60歳以上か一定障害の夫
②18歳に達する日日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の子
③60歳以上か一定障害の父母
④18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の孫
⑤60歳以上か一定障害の祖父母
⑥18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか60歳以上または一定障害の兄弟姉妹
⑦55歳以上60歳未満の夫
⑧55歳以上60歳未満の父母
⑨55歳以上60歳未満の祖父母
⑩55歳以上60歳未満の兄弟姉妹

遺族(補償)等年金の内容は、受給権者である遺族が1人の場合は遺族(補償)年金として給付基礎日額の153日分(ただし、その遺族が55歳以上の妻または一定の障害状態にある妻の場合は給付基礎日額の175日分)、遺族特別支給金として300万円、遺族特別年金として算定基礎日額の153日分(ただし、その遺族が55歳以上の妻または一定の障害状態にある妻の場合は算定基礎日額の175日分)となっており、このうち、特別支給金は1回限り受け取ることができる一時金として、遺族(補償)年金と遺族特別年金は、年金として支給されます。

なお、遺族(補償)等年金を受給することとなった遺族は、1回に限り、年金を前払いで受けることができます(遺族(補償)等前払一時金)。前払一時金は、給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1000日分から選択することができ、前払一時金が支給されると、遺族(補償)等年金は、各月分(1年たってからの分は法定利率で割り引いた額)の合計額が、前払一時金の額に達するまでの間支給停止されます。

⑵遺族(補償)等一時金

遺族(補償)等一時金は、①被災労働者の死亡の当時、遺族(補償)等年金を受ける遺族がいない場合又は、②遺族(補償)等年金の受給権者が最後順位者まですべて失権したとき、受給権者であった遺族の全員に対して支払われた年金の額および遺族(補償)等年金前払一時金の額の合計額が、給付基礎日額の1000日分に満たない場合に支給されます。

遺族(補償)等一時金の受給権者及びその順位は次のとおりです。

①配偶者
②労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母
③その他の子・父母・孫・祖父母
④兄弟姉妹
なお、上記のうち、②および③の中では、子・父母・孫・祖父母の順になります。
同順位者が2人以上いる場合はそれぞれ受給権者となります。

遺族(補償)等一時金の内容は、①被災労働者の死亡当時、遺族(補償)等年金を受ける遺族がいない場合は、遺族(補償)等一時金として給付基礎日額の1000日分、遺族特別支給金として300万円、遺族特別一時金として算定基礎日額の1000日分となっています。これに対し、②遺族(補償)等年金の受給権者が最後順位者まですべて失権したとき、受給権者であった遺族の全員に対して支払われた年金の額および遺族(補償)等年金前払一時金の額の合計額が、給付基礎日額の1000日分に満たない場合は、遺族(補償)等一時金として給付基礎日額の1000日分からすでに支給された遺族(補償)等年金等の合計額を差し引いた金額と、遺族特別一時金として算定基礎日額の1000日分から、すでに支給された遺族特別年金の合計額を差し引いた金額となります。

遺族(補償)等一時金は、一時金として支給されます。

⑶遺族(補償)等給付の請求手続き

遺族(補償)等年金の請求は、様式第12号(通勤災害の場合は様式第16号の8)の請求書を、遺族(補償)等一時金の請求は、様式第15号(通勤災害の場合は様式第16号の9)の請求書を所轄の労働基準監督署に提出して行います。その際、死亡診断書や戸籍謄本等も提出することになります。

葬祭料(葬祭給付)

葬祭料(葬祭給付)は、葬祭を行う遺族に対して支給されますが、葬祭を行う遺族がおらず、被災労働者の会社が葬祭を行った場合は、葬祭を行った会社に対して葬祭料(葬祭給付)が支給されます。

葬祭料(葬祭給付)の額は、31万5000円に給付基礎日額の30日分を加えた額です。ただし、この額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は給付基礎日額の60日分が支給額となります。

葬祭料(葬祭給付)の請求は、様式第16号(通勤災害の場合は様式16号の10)の請求書を所轄の労働基準監督署に提出して行います。

会社等に対する損害賠償請求

労災事故が原因で、被災労働者がお亡くなりになってしまった場合、ご遺族の方に対して、労災保険給付として、遺族(補償)等給付や、葬祭料(葬祭給付)が支給されます。

しかし、労災保険による給付は最低限度のものであり、慰謝料等は労災保険から支払われません。

労災事故の発生について、勤務先の会社等に安全配慮義務違反等の責任があれば、慰謝料等、労災保険からは填補されない損害の賠償は、当該会社等に対して請求していくことになります。

ぜひ一度ご相談ください

労災事故が原因で被災労働者がお亡くなりになってしまった場合、ご遺族の今後の生活のためにも、まずは労災申請をして、遺族(補償)等給付などの労災保険給付を受けるようにしましょう。
また、ご遺族が被った損害が可能な限り回復されるためには、労災事故の発生に責任がある勤務先の会社等に対しても、慰謝料を含めた損害賠償を請求する必要があります。

労災申請には勤務先の会社等が協力してくれることもありますが、勤務先の会社等がその責任を否定するあまり、労災申請に協力してくれないこともあります。

労災問題に精通している弁護士にご相談いただければ、労災申請手続きや勤務先の会社等に対する損害賠償請求をはじめ、個別具体的なアドバイスを受けることができます。

労災事故でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。