事例と原因
指の骨折は、労災事故でも多い怪我の一つです。
特に、工場や建設現場、倉庫などで頻繁に発生します。
このような事故は、単なる怪我にとどまらず、仕事や日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
ここでは、指の骨折に関する具体的な事例とその原因について説明します。
事例1: 建設現場での落下物による事故
建設現場で作業をしていたJさんは、高所から落下した工具が指に直撃し、病院で複雑骨折と診断されました。このような事故は、作業者の頭上で作業が行われている場合や、適切な安全対策が取られていないような場合に多く発生します。特に、ヘルメットや安全手袋が着用されていないと、事故が発生するリスクが高くなります。
事例2: 製造工場における挟まれ事故
製造工場で働いていたKさんは、プレス機を使用中に指を挟まれて骨折しました。
プレス機や歯車が露出している機械などを扱う現場では、誤操作や不注意などにより、指が挟まれて骨折してしまうことがあります。
特に、作業手順が守られていなかったり、作業環境が整っていない場合には、こうした事故が起こりやすいといえます。
事例3: 倉庫での荷物取り扱い中の事故
倉庫でLさんは、重い箱を持ち上げている際にバランスを崩し、指を挟んで骨折しました。
重い荷物の取り扱い時に、無理な体勢になってバランスを崩したりすると、荷物を落とす等により指を挟んでしまい、指を骨折することがあります。
また、フォークリフトなどの機械を使用している場合、機械の操作ミスや周囲の不注意によって指が骨折することもあります。
原因
指の骨折は、以下のような要因で発生します。
落下物による衝撃
高所からの工具や材料の落下によって、指に強い衝撃が加わり骨折する。
圧力負荷
プレス機やその他の機械を扱っている際の誤操作や不注意により、指が挟まれてしまい、骨折する。
荷物取り扱い中の事故
重い荷物を扱う際に、荷物を落として指を挟んだりして骨折する。
医療的対応とリハビリテーション
指の骨折後の医療的対応
指の骨折は、適切な医療処置が迅速に行われることが重要です。骨折の種類によっては、以下のような対応が行われます。
固定
軽度の骨折であれば、ギプスやスプリントで指を固定し、安静を保つことが一般的です。
手術
開放骨折や粉砕骨折の場合、手術によって骨を元の位置に戻し、ピンやプレートで固定する必要があります。
手術後は、経過観察が必要です。
リハビリテーション
骨折が治癒した後、指の機能を回復させるためのリハビリテーションが行われます。指の可動域や筋力を回復させるために、以下のようなリハビリメニューが実施されます。
関節可動域訓練
骨折によって硬直した関節の動きを回復させるための訓練です。これにより、日常生活における手指の動作がスムーズに行えるようになります。
筋力トレーニング
指や手全体の筋力を強化するためのトレーニングです。筋力が低下したままだと、再び骨折しやすくなるため、筋力回復は非常に重要です。
作業療法
指の細かい動作を取り戻すために、特定の動作を繰り返し行う訓練が行われます。これにより、書く、掴む、押すといった日常動作を再学習します。
法的補償と後遺障害認定
法的補償
指の骨折は労災保険の適用対象であり、治療費、休業補償給付、障害補償給付などが支給されます。
特に、指の機能が大幅に低下した場合や、日常生活に支障をきたす場合、適正な補償を受けることが重要です。
後遺障害認定
指の骨折が原因で一定の後遺障害が残った場合、労災保険の後遺障害等級認定に基づき、残存した後遺障害の程度に応じた等級が決定されます。
以下は、指の骨折に関連する主な後遺障害等級です。
8級4号:1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指の用を廃した場合
9級9号:1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指の用を廃した場合
10級6号:1手の母指又は母指以外の2の手指の用を廃した場合
12級9号:1手の示指、中指又は環指の用を廃した場合
13級4号:1手の小指の用を廃した場合
14級7号:1手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなった場合
これらの等級に基づき、障害補償給付が給付されます。
被害者が受け取る補償額は、認定された後遺障害等級によって異なります。
また、適切な等級認定を受けるためには、医師の診断書の内容が重要となります。
一方、慰謝料は労災保険からは支給されず、逸失利益や休業損害も労災保険からは全損害に相当する補償がされるわけではありません。
労災保険から支給されないこれらの損害は、労災事故の発生に責任がある勤務先の会社に対して請求することになります。
もっとも、勤務先の会社からは、「会社に安全配慮義務違反はないため損害を賠償する責任はない」とか「労災事故が発生したのは専ら被害者の不注意によるものである」といった主張をされることも珍しくありません。
また、請求する損害額の計算も専門的な知識が必要となります。
当事務所では、適切な後遺障害等級の認定や勤務先の会社に対する損害賠償請求について、労災問題に注力している弁護士が全力でサポートさせていただきますので、手指の骨折をはじめとする労災被害でお困りの方は、是非、下川先生法律事務所にご相談ください。