事例と原因
膝が動かなくなる障害は、労働現場での事故や業務による過度の負担等によっても発生することがあり、被害者の生活や仕事に深刻な影響を与えます。
膝には、歩行や立つことにかかわる重要な関節があり、この部分に障害が発生すると、移動や立ち作業が困難になるため、日常生活に大きな弊害をもたらします。
以下、具体的な事例とその原因について説明します。
事例1: 膝関節の損傷による膝の機能喪失
建設現場で働いていたKさんは、足場から誤って転落し、膝を強打しました。
この事故により、膝関節の靭帯や軟骨が損傷し、膝が動かなくなりました。
膝関節の損傷は、転倒や過度な負荷が関節にかかることで発生することがあり、膝の可動域が著しく制限されることもあります。
事例2: 骨折による膝の機能低下
運送業に従事するLさんは、重い荷物を持ち上げている最中にバランスを崩し、膝を捻ってしまいました。
結果として膝の骨が折れ、治療を受けたものの、骨が完全に回復せず、膝の可動域が制限されてしまいました。
骨折は、膝の構造に直接的な損傷を与え、回復後も関節の動きが悪くなることも多いです。
事例3: 反復的なストレスによる膝の障害
長時間の立ち仕事や階段の上り下りを続けていたMさんは、次第に膝に痛みを感じるようになり、最終的には膝が動かなくなりました。
反復的なストレスが膝にかかることで、靭帯や軟骨が損傷し、最終的に動かなくなることがあります。
原因 膝が動かなくなる主な原因は以下の通りです。
膝関節の損傷
転倒や重い物の直撃によって膝関節が損傷し、可動域が失われることがあります。
骨折
膝の骨に衝撃が加わることで骨折が発生し、回復後も関節の動きが制限されることがあります。
反復的なストレス
長期間にわたり同じ動作を繰り返すことで、膝の靭帯や軟骨が損傷し、動かなくなることがあります。
労災補償と後遺障害等級認定
労災補償
膝が動かなくなる障害は、労災保険の対象となり、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付などの労災保険給付が支給されます。
労災の申請は、基本的には労働基準監督署に対して、所定の請求書等を提出することによって行います。
膝の機能喪失は、被害者の労働能力に深刻な影響を与えるため、適切な補償を受けることが重要です。
後遺障害等級認定
膝が動かなくなる障害が後遺障害として認定されると、労災保険の後遺障害等級に基づき、重症度に応じた等級(第1級~第14級)が決定されます。
以下は、膝が動かない場合に関連する主な後遺障害等級です。
8級7号:1下肢の3大関節(股関節、ひざ関節及び足関節)中の1関節の用を廃した場合
10級10号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害が残った場合
12級7号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害が残った場合
これらの等級に基づき、障害補償給付が支給されます。
それぞれの等級ごとに給付される金額は異なり、また、そもそもこれらの等級に該当しなければ、障害補償給付を受けることはできません。
被害者が障害補償給付を受けるためには、障害補償給付を申請する際に提出する医師の診断書の記載内容が重要となります。
適切な後遺障害等級が認定されることで、被害者に残存した障害に見合った障害補償給付を受けることができます。
会社に対する損害賠償請求
労災が認定されると、上記のように、療養補償給付や休業補償給付、障害補償給付といった労災保険給付を受けることができます。
しかし、慰謝料については労災保険から支給されません。
また、休業補償給付も、労災事故に遭う前まで支払われていた給与と同等の金額が支給されるわけではなく、後遺障害が残ったことによる逸失利益も、障害補償給付によって十分な補償がされるわけではありません。
このような労災保険からは補償されない損害については、労災事故に責任がある会社に対して請求していくことになります。
使用者である会社には、労働者の生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるように必要な配慮をする義務(安全配慮義務)が定められており(労働契約法5条)、会社が安全配慮義務に違反して労災事故が発生した場合には、当該会社に対して慰謝料等の損害賠償を請求することができます。
また、使用者である会社には、被用者が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任(使用者責任)が定められており(民法715条)、従業員のミスによって労災事故が発生した場合であっても、当該会社に対して損害賠償を請求することができます。
なお、労災の認定は、負傷や疾病等が業務上のものであると判断された場合に認定されるものであり、労災認定がされたからといって会社に損害賠償責任があるとは限りません。
まずはご相談ください
膝が動かなくなる障害は、労働災害によって引き起こされる深刻な後遺障害であり、その影響は被害者の生活や労働能力に大きな影響を与えます。
適切な医療処置やリハビリテーションを受けることはもちろん、被害者が受けた被害に見合った補償を受けるためには、適切な後遺障害等級の認定や労災事故の発生に責任がある会社から賠償を受けることが必要です。
下川法律事務所では、障害補償給付申請の際に提出する診断書の確認をはじめとする、後遺障害等級認定についてのサポートを行っています。
また、会社に対する損害賠償請求についても、被害者に代わって、労災問題に注力した弁護士が全力で対応いたします。
労災事故に遭われて膝が動かない等の怪我をされた方につきましては、是非、下川法律事務所にご相談下さい。