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手指が動かない症状について

事例と原因

手指が動かなくなる症状は、労働災害において非常に深刻な後遺症の一つです。

作業現場での事故や怪我が原因で、手指の機能が失われることがあります。

このような症状は、被害者の日常生活や労働能力に大きな影響を及ぼすため、適切な治療が不可欠です。

ここでは、具体的な事例とその原因について説明します。

事例1: 神経損傷による手指の機能喪失

製造工場で働いていたVさんは、機械の操作中に誤って手を挟まれ、指の神経を損傷しました。

この事故によって、指が動かなくなり、日常生活や仕事に大きな支障が生じるようになりました。

神経損傷により、手指の動きに必要な信号が脳から指に伝わらなくなることもあり、部分的な機能不全にとどまらず、完全な麻痺に至ることもあります。

事例2: 筋肉損傷による手指の機能低下

建設現場で働いていたWさんは、高所から落下した重い工具が手に当たり、筋肉を損傷しました。この事故により、指の筋力が失われ、手指を動かすことが困難になりました。

指を動かすために必要な筋力が弱まったり、完全に失われたりすると、手指に機能障害が生じます。

事例3: 切断事故による手指の機能喪失

農業作業中にXさんは、誤って電動ノコギリで指を切断してしまい、再接合手術が行われましたが、結果的に神経や筋肉が十分に回復せず、手指が動かなくなりました。

切断事故は、神経や筋肉の損傷が大きいため、手指の動きが回復しないことも多くあります。

原因

手指が動かなくなる原因は、以下のような要因で発生します。

神経損傷

機械による挟み込みや切断事故が原因で、神経が損傷し、手指が動かなくなることがあります。

筋肉損傷

重い物が手に落下するなどの事故により、筋肉が損傷し、手指の動きが制限されることがあります。

切断事故

指を切断するような事故では、再接合が成功しても神経や筋肉の機能が回復しないことがあります。

労災補償と後遺障害認定

労災補償

手指が動かなくなる症状は、労災保険の対象となり、治療費、休業補償給付障害補償給付などが支給されます。

手指の機能喪失は、被害者の生活や労働能力に深刻な影響を与えるため、適切な補償を受けることが重要です。

後遺障害等級認定 手指が動かない症状が後遺障害として認定される場合、労災保険の後遺障害等級に基づき、重症度に応じた等級が決定されます。

以下は、手指が動かない場合に関連する主な後遺障害等級です。

4級6号:両手の手指の全部の用を廃した場合

7級7号:片手の5の手指又は母指を含み4の手指の用を廃した場合

8級4号:片手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指の用を廃した場合

9級9号:片手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指の用を廃した場合

10級6号:片手の母指又は母指以外の2の手指の用を廃した場合

12級9号:片手の示指、中指又は環指の用を廃した場合

13級4号:片手の小指の用を廃した場合

14級7号:片手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなった場合

これらの等級に基づき、障害補償給付が行われます。

障害補償給付を請求するためには、医師の診断書が必要となり、障害補償給付の認定は、提出した医師の診断書等に基づいて行われます。

会社に対する損害賠償請求

労災が認定されると、労災保険給付を受給することができますが、労災保険からは慰謝料は支給されません。

また、逸失利益や休業損害についても、労災保険から全損害額に相当する給付を受けることはできません。

労災保険では補償されないこれらの損害については、労災事故の発生に責任がある会社に対して請求していくことになります。

会社に対する損害賠償請求の法的根拠には以下のものがあります。

債務不履行責任(安全配慮義務違反)

使用者である会社には、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務(安全配慮義務)があります(労働契約法5条)。

会社が安全配慮義務に違反して労働災害が発生した場合、会社は債務不履行責任を負います。

一般不法行為責任

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(民法709条)。

不法行為一般についての基本的な規定です。

使用者責任

被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任です(民法715条)。

例えば、他の従業員のミスで労災事故が発生して負傷した場合、使用者責任を根拠に、会社に対して損害賠償を請求することができます。

土地工作物責任

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負い、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償する責任を負います(民法717条)。

土地工作物責任は、占有者や所有者が会社以外の第三者であった場合、当該第三者に対する損害賠償責任追及の根拠にもなります。

まずは弁護士へご相談を

適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、医師の診断書の記載内容が大変重要になります。

当事務所では、労災に注力した弁護士が後遺障害等級認定の際、診断書のチェックや医師との面談等、適切な後遺障害等級が認定されるためのサポートを行っています。

また、会社に対して損害賠償を請求すると、会社から責任の有無や被災労働者の過失相殺等について主張されることが多く、このような主張に対しては法的な根拠に基づいた反論をする必要があります。

手指が動かなくなる症状は、労働災害によって引き起こされる深刻な後遺症であり、被害者の生活や労働能力に大きな影響を与えます。

適切な医療処置やリハビリテーションを受けることはもちろん、十分な補償を受けるためには、適切な後遺障害等級の認定が必要です。

また、労災保険から給付を受けられない慰謝料等については、会社に対する損害賠償請求も検討するべきです。

労災事故に遭われて手が動かないといった怪我をされた方につきましては、労災に注力した弁護士が全力でサポートいたしますので、下川法律事務所にご相談いただければと思います。