事例と原因
肩が動かなくなる障害は、労働現場での事故や長時間の重労働が原因で発生する深刻な障害です。肩は腕や上半身の動きを支える重要な部位であり、ここに障害が生じると日常生活や仕事に大きな支障が生じます。ここでは、具体的な事例とその原因について説明します。
事例1: 肩関節の損傷による肩の機能喪失工場で機械のメンテナンスを行っていたYさんは、重い部品を持ち上げた際に肩に激しい痛みを感じました。診断の結果、肩関節が損傷し、肩を動かすことができなくなっていました。肩関節の損傷は、肩の関節がずれたり、関節内の組織が損傷したりすることで発生します。これにより、肩の可動域が制限され、動かすことが困難になるというものです。
事例2: 筋肉の断裂による肩の機能低下 建設現場で働いていたZさんは、高所での作業中にバランスを崩し、重い工具を支えようとした際に肩の筋肉(腱板)を断裂してしまいました。この結果、肩の動きが制限され、重い物を持ち上げることが困難になりました。筋肉の断裂は、過度の負荷や突然の動きにより発生し、肩の筋力や可動域に深刻な影響を与えます。
事例3: 反復的な動作による肩の障害 運送業に従事しているAさんは、長年にわたり重い荷物を持ち上げる作業を続けてきた結果、肩の動きに制限が生じるようになりました。反復的な動作による肩の障害は、慢性的な炎症や組織の損傷によって引き起こされ、最終的に肩が動かなくなることがあります。
原因
肩が動かなくなる障害の主な原因は以下の通りです。
肩関節の損傷
肩関節がずれたり、損傷したりすることで、肩の動きが制限されます。
筋肉の断裂
肩の筋肉が過度の負荷や突然の動きにより断裂し、肩の機能が低下します。
その他軟部組織の損傷
長期間にわたり同じ動作を繰り返すことで、肩の組織が損傷し、最終的に動かなくなることがあります。
医療的対応とリハビリテーション
肩が動かない症状に対する医療的対応 肩が動かなくなる症状に対しては、原因に応じた適切な医療処置が必要です。以下は、一般的な医療対応の流れです。
肩関節修復手術
肩関節の損傷が原因で肩が動かなくなった場合、手術によって関節を修復することが行われます。この手術は、関節のずれを直し、損傷した組織を修復することを目的としています。
関節の損傷について完治を望むのであれば手術を行うしかないといわれています。
筋肉断裂(腱版断裂)の治療
筋肉の断裂が原因で肩が動かない場合、保存療法と手術療法があります。保存療法は、湿布や痛み止めの内服、ヒアルロン酸やステロイドの注射、リハビリなどです。
リハビリでは、肩の周囲の筋肉を鍛えて肩をあがりやすくしたり、腱の周りにすべりを良くしたりします。多くの場合は保存療法が選択されますが、改善が見られない場合は手術療法を検討します。
また、肩板断裂の程度や症状の程度、早期職場復帰などの希望がある場合は、最初から手術を検討することもあります。
疼痛管理と炎症抑制
痛みが原因で動きが悪い場合,肩の動きを改善するためには、疼痛管理や炎症の抑制が重要です。これには、鎮痛薬や抗炎症薬の使用、さらに理学療法が含まれます。
リハビリテーション
肩が動かない症状を改善し、再び動けるようにするためのリハビリテーションは不可欠です。リハビリの内容は、以下のようなものが含まれます。
関節可動域訓練
肩関節の可動域を広げるための訓練が行われます。これにより、肩の動きを少しずつ回復させることが目指されます。
筋力トレーニング
肩の筋力を回復させるためのトレーニングが行われます。筋力が回復することで、肩の動きが改善され、日常生活での活動が容易になります。
作業療法
肩を使った日常動作を再学習するための訓練が行われます。これにより、患者は再び生活の質を向上させることができます。
法的補償と後遺障害認定
法的補償
肩が動かなくなる障害は、労災保険の対象となり、治療費、休業補償給付、障害補償給付などが支給されます。肩の機能喪失は、被害者の労働能力に深刻な影響を与えるため、適切な補償を受けることが重要です。
後遺障害認定
肩が動かなくなる障害が後遺障害として認定される場合、労災保険の後遺障害等級に基づき、重症度に応じた等級が決定されます。以下は、肩が動かない場合に関連する主な後遺障害等級です。
6級5号:片肩の関節が用を廃し(硬直またはこれに近い状態・間然し完成麻痺又はこれに近い状態),かつ,肘関節か手関節についても用を廃し(完全に動かなくなっ)た場合
8級6号:片肩の関節が用を廃し(完全に動かなくなっ)た場合
10級9号:片肩の関節に著しい機能障害が残る(怪我をしていない側の1/2の可動域角度に制限されている)場合
12級6号:片肩の関節の機能に障害が残る(怪我をしていない側の3/4以下の可動域角度に制限されている)場合
これらの等級に基づき、障害補償給付が行われます。被害者が適切な補償を受けるためには、医師による適切な内容の診断書が不可欠です。後遺障害の診断書が適切に記載されるかにご不安が終わりの場合は,早い段階で弁護士への相談をご検討いただくのが良いと思われます。
まずは弁護士へご相談を
肩が動かなくなる障害は、労働災害によって引き起こされる深刻な後遺症であり、その影響は被害者の生活や労働能力に大きな影響を与えます。
適切な医療処置やリハビリテーションを受けることはもちろん、正当な法的補償を受けるためには、専門知識を持つ弁護士のサポートが不可欠です。
労災保険の申請手続きや後遺障害等級の認定は、被害者自身が対応するには複雑で困難なことが多く、適切な手続きを行わないと十分な補償を受けることが難しくなります。
弁護士は、労災保険の申請から後遺障害認定の段階から全面的にサポートすることが可能です。また、万が一、申請が認められなかった場合(不支給決定)には,審査請求により原処分の取消を求めていくことが必要となりますので、別途ご相談ください。
早期に専門の弁護士に相談し,適切なサポートを受けることで、安心して治療やリハビリテーションに専念でき、これにより、今後の生活に向けて最善の準備が整えられると考えられますので、肩が動かないという症状に悩まされている方におかれましては、是非、下川法律事務所にご相談いただければと思います。