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製造業における工場等での労災事故【弁護士が解説】
下川絵美
弁護士法人晴星法律事務所のホームページをご覧いただきありがとうございます。当事務所は、広島に地域密着で、個人法務(離婚・相続・交通事故・労働災害・借金問題等)から、企業法務(予防法務・企業内トラブル・企業間トラブル等)まで、幅広い分野の案件を取り扱っております。 様々な法的分野のお悩みを抱えている方のお力になれるよう,所員一同,全力でサポートいたします。 広島で,法律トラブルを抱えておられる方は,お一人で悩まず,お気軽にご相談いただければと思います。

勤務先の会社には、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務(安全配慮義務)があります(労働契約法5条)。

そして、労働者が業務上の事由によって負傷した場合、労災事故に該当し、労災保険給付を受給することができます。

食品製造業、食品加工業、金属加工業をはじめ、製造業では、工場で使用するベルトコンベアやロール機などの機械に手や足、指を挟まれたり巻き込まれたりする、滑りやすい場所で作業をしていて転倒する、高所で作業していて墜落する、刃物等によって切ってしまうといった事故が多発しています。

以下では、製造業における工場等で労災事故に遭った場合の対応について説明いたします。

労災申請の流れ

製造業における工場等で発生した労災事故に遭って怪我をした場合、まずは労災申請をすることが重要です。

労災が認定されると、怪我の治療のため療養補償等給付が支給されます。療養補償等給付は、労災指定病院等の指定医療機関等で治療等を受けたり(療養の給付)、指定医療機関等以外で治療等を受けたときに、治療費等の支給を受けたりする(療養の費用の給付)ことができます。また、労災事故の怪我によって働くことができずそのために給与を受け取ることができないときには、休業補償等給付の支給を受けることができます。

これらの療養補償等給付や休業補償等給付の請求は、管轄の労働基準監督署に請求書を提出することにより行います。

特に、工場内で発生した事故は、重傷になることも多く、多額の治療費が必要となることも珍しくありません。また、労災事故による怪我で長期間働くことができなくなることも多くあります。

労災認定がされると、これらの治療費や、働くことができない間の収入に関する負担を軽くすることができるでしょう。

後遺障害が残ってしまったときは

労災事故によって負った怪我が事故に遭う前の状態に戻ることが理想ですが、事故に遭う前の状態に戻らず後遺障害が残ってしまうこともあります。

治療を継続したにもかかわらず、一定の後遺障害が残ってしまった場合は、障害補償等給付を受給することができます。

障害補償等給付は1級から14級の障害等級があり、各等級によって支給される金額も異なります。これらの障害等級に該当しない場合は、障害補償等給付は支給されません。

障害補償等給付の請求も管轄の労働基準監督署に所定の請求書を提出することにより行います。

製造業における労災事故は、挟まれ・巻き込まれ事故、転倒事故、墜落・転落事故、動作の反動・無理な動作、切れ・こすれと様々な態様があり、中には手足を切断してしまうこともあります。

手足を切断してしまった場合の後遺障害認定基準は次のとおりです。

手の切断に関する後遺障害認定基準

1級6号   両上肢をひじ関節以上で失ったもの       

2級3号   両上肢を手関節以上で失ったもの 

4級4号   1上肢をひじ関節以上で失ったもの       

5級2号   1上肢を手関節以上で失ったもの

「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは、①肩関節において、肩甲骨と上腕骨を離脱したもの②肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの③ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨を離断したもののいずれかに該当するものをいいます。

「上肢を手関節以上で失ったもの」とは、①ひじ関節と手関節の間において上肢を切断したもの②手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもののいずれかに該当することをいいます。

足の切断に関する後遺障害認定基準

1級8号   両下肢をひざ関節以上で失ったもの       

2級4号   両下肢を足関節以上で失ったもの 

4級5号   1下肢をひざ関節以上で失ったもの

4級7号   両足をリスフラン関節以上で失ったもの

5級3号   1下肢を足関節以上で失ったもの  

7級8号   1足をリスフラン関節以上で失ったもの    

「下肢をひざ関節以上で失ったもの」とは、①股関節において寛骨と大腿骨を離断したもの②股関節とひざ関節との間において切断したもの③ひざ関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したもののいずれかに該当するものをいいます。

「下肢を足関節以上で失ったもの」とは、①ひざ関節と足関節との間において切断したもの②足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもののいずれかに該当するものをいいます。

「リスフラン関節以上で失ったもの」とは、①足根骨(踵骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3個の楔状骨からなる。)において切断したもの②リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離断したもののいずれかに該当するものをいいます。

切断以外に、動きが制限されるようになる機能障害や、変形障害も障害補償等給付の対象となる後遺障害のとなります。

また、手指や足指に残存した後遺障害も同様に障害補償等給付の対象とされています。

後遺障害が残ったときに当事務所ができること

障害補償等給付の請求の際には、労働者災害補償保険診断書も提出する必要があります。労働者災害補償保険診断書は、医師が作成するもので、後遺障害診断書とよばれることもあります。

また、労働基準監督署担当者との面談や医師に対する面談が行われることもあります。

後遺障害の認定には、労働者災害補償保険診断書の記載内容や面談の対応が非常に重要となります。

弁護士法人晴星法律事務所では、労働者災害補償保険診断書の記載内容に過不足がないかの確認や、労働基準監督署担当者との面談の同席にも対応いたします。

障害補償等給付の請求が認められなかった場合には、審査請求や再審査請求という手段によって争うことができます。しかし、審査請求や再審査請求によって判断が覆ることはほとんどありません。

そのため、障害補償等給付の請求をする際に、労働者災害補償保険診断書をきちんと確認し、労働基準監督署との面談にも適切に対応するようにしましょう。

会社に対する損害賠償請求について

労災が認定されると、療養補償等給付や休業補償等給付などが支給されます。

しかし、慰謝料等は労災保険からは支給されません。慰謝料等、労災保険から支給されない損害については、労災事故の発生に責任がある勤務先の会社に対して請求することになります。

前述のように、使用者である勤務先の会社には、安全配慮義務があり、当該義務に違反して労災事故が発生した場合には、会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

例えば、工場内における労災事故であれば、加工用の機械に安全装置を設置する義務があったのにそれを怠っていたことや、危険な作業を行う労働者に対して十分に指導をするべきであったのにそれを怠っていたこと等が挙げられます。

また、勤務先の会社は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任(使用者責任)もあります(民法715条)。

そのため、他の従業員がミスをして労災事故が発生した場合にも、会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

まずはご相談下さい

業務中に工場等で労災事故に遭って負傷した場合、療養補償等給付や休業補償等給付、障害補償等給付をはじめとする労災保険給付を受給することができます。

また、勤務先の会社に責任がある場合、当該会社に対して慰謝料等を請求することができる可能性があります。

もっとも、勤務先の会社に責任があるかどうかを一般の方が判断することは難しいことかと思います。また、勤務先の会社から反論をされると、法的根拠に基づいた再反論や証拠の提出が必要になることもあります。

弊所にご相談いただけましたら、労災申請や勤務先の会社に対する損害賠償請求について、個別の事案に即した具体的なアドバイスをさせていただきます。

ご依頼いただいた場合は、労働者災害補償保険診断書の記載内容の確認や、労働基準監督署担当者との面談の同席にも対応可能です。また、勤務先に会社に対する損害賠償請求も代わりに行います。

製造業をはじめ、事業場で労災事故に遭われ、労災申請や勤務先の会社に対する損害賠償請求について悩まれている方におかれましては、是非、弁護士法人晴星法律事務所にご相談下さい。