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アスベスト(石綿)健康被害に関する給付金申請や損害賠償請求の流れについて
下川絵美
弁護士法人晴星法律事務所のホームページをご覧いただきありがとうございます。当事務所は、広島に地域密着で、個人法務(離婚・相続・交通事故・労働災害・借金問題等)から、企業法務(予防法務・企業内トラブル・企業間トラブル等)まで、幅広い分野の案件を取り扱っております。 様々な法的分野のお悩みを抱えている方のお力になれるよう,所員一同,全力でサポートいたします。 広島で,法律トラブルを抱えておられる方は,お一人で悩まず,お気軽にご相談いただければと思います。

はじめに

アスベスト(石綿)は、天然に産出される鉱物繊維で、紡織性、抗張力、耐熱性等に優れており、建材をはじめ、様々な製品に使われていました。

しかし、アスベスト(石綿)は、石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚等の疾患を引き起こすことから、現在では、新たなアスベスト(石綿)製品の製造や使用が禁止されています。

このようなアスベスト(石綿)健康被害に遭われた方については、給付金制度の利用や損害賠償を請求することができる可能性があります。

以下では、アスベスト(石綿)健康被害に関する給付金の申請や損害賠償請求の流れについて説明します。

健康管理手帳(じん肺)、労災申請、救済給付の申請

アスベスト(石綿)健康被害に対する救済制度については、職歴や病態によって利用できる制度が異なります。

・健康管理手帳(じん肺)

アスベスト(石綿)を扱う業務に従事していた労働者が石綿肺にり患した場合には、じん肺の健康管理手帳の交付を受けられる可能性があります。

じん肺の健康管理手帳の交付を受けると、指定された医療機関で年に1回、無料で健康診断を受けることができるようになります。

じん肺の健康管理手帳の交付を受けるためには、じん肺健康診断を受診し、じん肺管理区分の申請をすることが必要となります。じん肺管理区分の管理2や管理3が認定されると、健康管理手帳(じん肺)の交付を受けることができます。

ただし、健康管理手帳の申請ができるのは、労働者に限られ、一人親方等自営業の場合は健康管理手帳の申請をすることはできません。

なお、健康管理手帳は、じん肺の他に、石綿の健康管理手帳もあります。石綿の健康管理手帳は、指定された医療機関で年に2回、無料で健康診断を受けることができます。しかし、石綿肺のうち、後述する国家賠償請求訴訟や建設アスベスト給付金の対象とされているのは、管理2又は管理3、管理4の石綿肺(管理2・3の石綿肺に合併症がある場合も含みます)です。そのため、石綿肺にり患し、国家賠償請求訴訟や建設アスベスト給付金の申請を考えている場合は、じん肺健康診断を受診してじん肺管理区分の申請をすることが重要となります。

・労災申請

アスベスト(石綿)を取り扱う業務を行い、アスベスト(石綿)にばく露し、それによって石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水、中皮腫、肺がんにり患された方ないしそのご遺族は、労災申請をすることができます。労災申請をすると、上記のアスベスト(石綿)関連疾患にり患しているかどうかや業務上アスベスト(石綿)にばく露したのかどうかが調査され、労災が認定されれば、療養補償給付や遺族補償給付等の労災保険給付を受給することができます。

そのため、アスベスト(石綿)を取り扱う業務を行い、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水、中皮腫、肺がんにり患されて治療を受けている労働者やそのご遺族の方は、労災申請を検討するとよいでしょう。

一方、石綿肺にり患して労災申請をするときには、原則として事前にじん肺管理区分の決定を受ける必要があるとされています。もっとも、労働基準監督署によって運用が異なる可能性があるため、石綿肺にり患されて労災申請を考えている方は、管理区分の決定を受けておく必要があるかどうか、所轄の労働基準監督署に確認するとよいでしょう。

なお、労災申請をすることができるのは、労働者又は労災保険に特別加入している場合であり、労災保険に特別加入していない自営業者等については、後述する救済給付の申請を検討することになります。

また、遺族補償給付は被災労働者の死亡から5年で時効となりますが、仕事中にアスベスト(石綿)にばく露してアスベスト(石綿)関連疾患にり患された方のご遺族については、遺族補償給付が時効により請求できなくなった場合でも、特別遺族給付金を請求することができます。特別遺族給付金の請求期限は、令和6年4月現在で、令和14年3月27日までとなっています。

・救済給付

救済給付は、アスベスト(石綿)にばく露し、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水、中皮腫、肺がんといったアスベスト(石綿)関連疾患にり患し、労災を利用することができない方に対して、医療費等が支給される制度です。アスベスト(石綿)にばく露したのが業務上であるか否かは問われません。

救済給付の申請をすると、上記のアスベスト(石綿)関連疾患にり患しているかどうかが調査されます。

労災が認定されると、アスベスト(石綿)を取り扱う業務に従事し、アスベスト(石綿)にばく露して、一定のアスベスト(石綿)関連疾患にり患したことの裏付けにもなります。また、救済給付が認定されると、一定のアスベスト(石綿)関連疾患にり患したこと、管理2以上のじん肺管理区分の認定を受けていると、管理2以上のじん肺症にり患したことの裏付けとなります。

そのため、後述する国家賠償請求や建設アスベスト給付金の申請、会社に対する損害賠償請求は、労災等の認定を受けてから行うのが通常です。

国家賠償請求や建設アスベスト給付金の申請

アスベスト(石綿)工場や建設現場で、特定の期間、アスベスト(石綿)を取り扱う業務を行い、一定のアスベスト(石綿)関連疾患にり患された方やそのご遺族の方は、労災申請や救済給付等に加えて、国に対する損害賠償請求や建設アスベスト給付金の申請をすることができる可能性があります。

・工場型アスベスト訴訟(国家賠償請求)

そのためには、損害賠償請求権の期間内に訴訟を提起し、上記の期間、局所排気装置を設置すべきアスベスト(石綿)工場内において、アスベスト(石綿)粉じんにばく露する作業に従事した結果、一定のアスベスト(石綿)関連疾患にり患したことの証拠を提出する必要があります。

このうち、一定のアスベスト(石綿)関連疾患にり患したことについては、じん肺管理区分の決定や労災、救済給付の認定がされている場合には、これらの認定がされたことを証拠として提出することができます。

もっとも、じん肺管理区分の決定については、じん肺症の管理区分の決定がされるにとどまります。じん肺症には、石綿肺の他、珪肺等様々な症状があります。じん肺管理区分の管理2以上の決定がされたとしても、じん肺症のうち、石綿肺であることまで認定されたわけではないので、注意が必要です。

一方、局所排気装置を設置すべきアスベスト(石綿)工場でばく露したことについて、労災認定を受けている場合には、保有個人情報開示請求をすると、開示された資料に当時の就労状況が記載されているため、それも一つの証拠となります。もっとも、労災では、業務上の疾病であるかどうかを判断するために調査をされているにすぎず、局所排気装置を設置すべきアスベスト(石綿)工場内においてアスベスト(石綿)粉じんにばく露する作業を行っていたかどうかということまでは調査されていないこともあります。そのような場合、保有個人情報開示請求によって開示された資料以外の証拠も提出して、立証していくことになります。

国と和解をすることができると、国から最大1300万円(弁護士費用や遅延損害金は除く)の損害賠償金が支払われます。

・建設アスベスト給付金の申請

令和3年6月9日、「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立し、令和4年1月19日に施行されました。同法に基づく給付金は建設アスベスト給付金とも呼ばれています。

そして、昭和50年10月1日から平成16年9月30日までの間(吹付け作業に係る建設業務については、昭和47年10月1日から昭和50年9月30日までの間)に、一定の屋内建設現場の建設作業に従事してアスベスト(石綿)にばく露し、それによって一定のアスベスト(石綿)関連疾患にり患した方又はそのご遺族の方は、国に対して建設アスベスト給付金の申請をすることができます。

建設アスベスト給付金の支給を受けるためには、訴訟の提起をする必要はありませんが、上記の期間、一定の屋内建設現場の建設作業に従事してアスベスト(石綿)にばく露し、それによって一定のアスベスト(石綿)関連疾患にり患したことの資料を提出する必要があります。

じん肺管理区分の決定や労災、救済法の認定を受けている場合に、認定されたことを証拠として提出することができるのは、国家賠償請求と同様です。

また、上記期間内に一定の屋内建設現場の建設作業に従事してアスベスト(石綿)にばく露したことについては、労災の保有個人情報開示請求によって開示された資料や、かつての同僚に協力してもらう等により証明することになります。

資料を提出し、建設アスベスト給付金の認定要件を満たすことが認められると、国から最大で1300万円の給付金が支払われます。建設アスベスト給付金の場合、遅延損害金や弁護士費用の支払いはありません。

・会社に対する損害賠償請求

労働者としてアスベスト(石綿)にばく露する作業に従事し、それによって肺がんや中皮腫等一定のアスベスト(石綿)関連疾患にり患したことについて勤務先の会社等に安全配慮義務違反等が認められれば、当該勤務先の会社等に対して損害賠償請求をすることができます。

前述のように、会社に対する損害賠償請求も、労災や救済給付等が認定されてから行うのが通常です。

また、国家賠償請求や建設アスベスト給付金の金額は、国の責任が二次的であり、被災者が被った損害の2分の1を賠償する責任があることを前提に定められています。

これに対し、勤務先の会社等に対しては、基本的には被災者が被った損害の全部を請求することができます。

なお、屋内建設現場の建設作業に従事していた方については、建材メーカに対する損害賠償請求が認められる可能性もあります。

まずは弁護士法人晴星法律事務所へご相談ください

アスベスト(石綿)を取り扱う仕事をされて、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水、中皮腫、肺がんといったアスベスト(石綿)関連疾患にり患されてしまった方やそのご遺族は、国や会社に対して、損害賠償請求や給付金の申請等が認められる可能性があります。

弊所にご相談いただけましたら、労災や給付金等の制度、会社や国に対する損害賠償請求の流れ等について、具体的なアドバイスをさせていただきます。また、ご依頼いただければ、会社や国に対する損害賠償請求、建設アスベスト給付金の申請も代わりに行います。

アスベスト(石綿)健康被害に遭い、労災や救済給付の申請、国・会社に対する損害賠償請求、建設アスベスト給付金の申請等の手続きについて悩まれている方におかれましては、是非、弁護士法人晴星法律事務所にご相談いただければと思います。