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建設現場における労働災害について【弁護士が解説】

労働災害と安全配慮義務

労働災害とは、労働者が業務遂行中に業務に起因して受けた業務上の災害のことで、業務上の負傷、業務 上の疾病及び死亡をいいます。

したがって、多くの場合、仕事中の事故により生じた怪我は、労働災害と認定されます。

そして、労働災害と認定された場合、被災労働者は、労働基準法や労働者災害補償保険法に基づき、労働者の治療と生活補償を目的とした補償が行われます。

また、使用者には、「労働者が労務提供のために設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務」があります(最高裁判所昭和59年4月10日判決)。

このため、労働災害が生じた場合、被災労働者は、労災保険給付を超える損害(例えば、労働災害による慰謝料など。)については、民事上の損害賠償請求を使用者に対して行うことが出来ます。

なお、労働災害に当たるかという点については、「労働災害とは」のページも併せてご確認ください。

建設業と墜落・転落事故

令和5年度厚生労働白書によれば、建設業における労働災害においては、墜落・転落災害によるものが最も多く、死亡災害の約4割を占めているとされます。

このため、第13次労働災害防止計画(平成30年度から令和4年度)においては、計画の重点事項に、建設業における墜落・転落災害等の防止が位置づけられていたほどです。

また、墜落・転落災害は,負傷する場合でも骨折等の重大な傷病結果を生じさせる事例が多発しています。

2015年に労働安全衛生総合研究所が発表した調査報告では、墜落・転落災害における最多原因であったはしご等からの墜落・転落傷病結果について、実に68.6%が骨折であったとされており、このことからも墜落・転落災害の危険性が窺われます。

さらに、墜落・転落災害による負傷事例には、脊髄損傷など重篤な後遺障害が生じた事例も散見されています。

このように、建設業における墜落・転落災害は、非常に危険性の高いものであり、傷病事案においても、重篤な後遺障害が残存する可能性があります。

労災申請の流れ

申請の流れ

1 労働基準監督署への請求書提出

業務中に、墜落・転落災害に遭って怪我をされるなど、仕事中に事故に遭い怪我をされた時には、まず労災申請を行いましょう。

申請は、被災労働者の所属事業所の所在地を管轄する労働基準監督署に対する請求書の提出によって行われます。

請求書の種類については、下記の主な労災保険給付に記載してありますので、ご一読ください。

2 労働基準監督署による調査

請求書の提出を受けた所轄の労働基準監督署は、申請に基づくが調査を行います。

3 支給・不支給決定

調査の結果、被災労働者が労働災害によって死傷したと認定された場合、労災保険給付の支給が決定されます。

この場合、管轄の労働基準監督署又は都道府県労働局から、はがき又は書面により「支給決定通知」が送付されます。

請求した各種の労災保険給付の要件に該当しないと判断された場合には、「不支給決定通知書」が送付されることとなります。

一人親方について

建設業における労災保険は、その建設工事の元請業者の加入する労災保険によって、元請業者の雇用する労働者はもとより、下請業者の労働者の労働災害についても補償することに特色があります。

そして、国の労災保険は、労働者の業務または通勤による災害に対して保険給付を行う制度ですので、役員や一人親方といった労働者ではない者は制度の対象ではありません。

そのため元請業者の加入する労災保険による補償を受けられません。

もっとも、労働者を使用しないで土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復 破壊もしくは、解体またはその準備の事業(大工、左官、とび職人など)を行うことを常態とする一人親方等については、労働者に準じて保護することが適当であるとして、労災保険への任意加入が認められています。これを特別加入制度と言います。

なお、労働者を使用する場合であっても、労働者を使用する日の合計が1年間に100日に満たないときには、一人親方等として特別加入することができます。

補償の対象となる範囲には、一定の要件がありますのでご注意下さい。

また、一人親方であったとしても、元請業者との間に実質的には使用従属関係があったと認められる時は、個人で労災保険の特別加入をしなくても、元請業者が使用する労働者として扱われることもあります。

この場合、請業者の労災保険による補償を受けられる場合があります。

主な労災保険給付

療養(補償)等給付

労働災害によって負傷したり病気にかかって療養を必要とする時に、必要な費用が給付されます。

療養(補償)等給付には、「療養の給付」と「療養の費用の支給」とがあります。

これらは下記のとおり、申請様式が異なりますのでご注意下さい

「療養の給付」を請求する場合

療養を受けている指定医療機関等を経由して、所轄の労働基準監督署長に、様式第5号または様式第16号の3を提出してください。

「療養の費用の支給」を請求する場合

所轄の労働基準監督署長に、様式第7号または様式第16号の5を提出してください。

休業(補償)等給付

傷病の療養のため 労働することができず、賃金を受けられないときに給付されます。

なお、休業の初日から第3日目までは待期期間といい、この間は、労災保険による休業補償は支給されませんが、事業主が労働基準法の規定に基づく休業補償(1日につき平均賃金の60%)を行うこととなります。

休業(補償)等給付を請求のときには、所轄の労働基準監督署に様式第8号(通勤災害の場合は様式第16号の6)を提出してください。

障害(補償)等給付

業務または通勤が原因となった負傷や疾病が治ったとき、身体に一定の障害が残った場合に支給されます。

残存障害が、障害等級表に掲げる障害等級に該当するとき、その障害の程度に応じて、年金ないし一時金が支給されます。

障害(補償)等給付を請求するときは、所轄の労働基準監督署長に、様式10号(通勤災害の場合は様式第16号の7)を提出してください。

また、各請求書に添付する診断書に、医師または歯科医師の診断を記入してもらってください。

診断書料を請求する場合は、様式第7号または様式第16号の5を、併せて提出してください。

遺族(補償)等給付、葬祭料(葬祭給付)

「遺族(補償)等年金」と「遺族(補償)等一時金」の2種類があります。

葬祭料は、労働災害が原因で亡くなられた労働者の葬祭を行った遺族などに対して支給されます。

遺族(補償)等年金

この順位は、最先順位者が死亡や再婚等の事情により受給権を失うと、その次の順位者が受給権を取得する(これを「転給」といいます。)順番を示しています。

同順位の受給権者が2人以上いるときは、そのうちの1人を年金の請求、受領についての代表者とすることになっていますので、原則として同順位の受給権者がそれぞれ年金を等分して受領することは認められませんので注意して下さい。

ただし、世帯を異にし、別々に暮らしている場合などやむを得ない事情がある場合には、例外的に同順位の受給権者が、それぞれ年金を等分に受領出来る場合があります。

また、遺族(補償)等年金を受給することとなった遺族は、1回に限り、年金の前払いを受けることができます。ただし、被災労働者が亡くなった日の翌日から2年で時効となります。

遺族(補償)等年金の請求のときは、所轄の労働基準監督署長に、様式第12号(通勤災害の場合は様式第16号の8)を提出してください。

転給の際には、所轄の労働基準監督署長に、様式第13号に戸籍謄本など、被災労働者との身分関係を証明することができる書類を添付のうえ提出してください。

代表者の選任は、年金を請求するときまたは転給により年金を請求するときなどに年金申請様式第7号を所轄労働基準監督署長へ提出してください。

遺族(補償)等年金前払一時金の請求は、原則として、遺族(補償)等年金の請求と同時に、年金申請様式第1号を、所轄の労働基準監督署長に提出する形で行ってください。

遺族(補償)等一時金

次のいずれかの場合に支給されます

①遺族(補償)等年金を受ける遺族がいない場合

② 遺族(補償)等年金の受給権者が最後順位者まですべて失権したときであって、受給権者であった遺族の全員に対して支払われた年金の額および遺族(補償)等年金前払一時金の額の合計額が、給付基礎日額の1000日分に満たない場合

遺族(補償)一時金の請求のときは、所轄の労働基準監督署長に、様式 第15号(通勤災害の場合は様式第16号の9)を提出してください。

葬祭料(葬祭給付)

葬祭料等(葬祭給付)の支給対象は、必ずしも遺族とは限りませんが、通常は葬祭を行うにふさわしい遺族となります。

なお、葬祭を執り行う遺族がなく、社葬として被災労働者の会社が葬祭を行った場合は、その会社に対して葬祭料等(葬祭給付)が支給されることとなります。

葬祭料(葬祭給付)の請求のときは、所轄の労働基準監督署長に、様式第16号(通勤災害の場合は様式第16号の10)を提出してください。

また、請求にあたっては、死亡診断書、死体検案書、検視調書またはそれらの記載事項証明書など、被災労働者の死亡 の事実および死亡の年月日を証明することができる書類が必要となります。ただし併せて遺族 (補償)等給付の請求書を提出する際に添付してある場合には、必要ありません。

傷病(補償)等年金

労働災害が原因となった負傷や疾病の療養開始後1年6か月を経過した日またはその日以後において、①その負傷または疾病が治っておらず、②その負傷または疾病による障害の程度が傷病等級表の傷病等級に該当する場合に支給されます。

傷病(補償)等年金の支給・不支給の決定は、所轄の労働基準監督署長の職権によって行われますので、請求手続きはありません。

ただし、療養開始後1年6か月を経過しても傷病が治っていないときは、その後1か月以内に様式第16号の2を所轄の労働基準監督署長に提出しなければなりません。

また、療養開始後1年6か月を経過しても傷病(補償)等年金の支給要件を満たしていない場合は、 毎年1月分の休業(補償)等給付を請求する際に、様式第16号の11を併せて提出しなければなりません。

介護(補償)等給付

介護(補償)等給付を請求するときは、所轄の労働基準監督署長に、様式第16号の2の2を提出してください。

なお、 提出に当たっては、医師または歯科医師の診断書添付は必須となっています。

また、傷病(補償)等年金の受給者および障害等級第1級3号・4号または第2級2号の2・2号の3 に該当する方については、診断書を添付する必要はありません。また、継続して2回目以降の介護(補償)等給付を請求するときにも、診断書は必要ありません。

労災保険による補償だけでは不十分

労働災害に遭われた場合、労災保険給付として、療養(補償)等給付や休業(補償)等給付が支給されるものの、労働災害に遭ったことを原因とする慰謝料は支給されません。

また、休業損害についても、その一部しか労災保険からは支給されません。

そこで、これらの損害を賠償してもらうためには、使用者や元請業者を相手とする損害賠償請求を行うしかありません。そのため、労働災害に遭われた場合は、これらの請求を積極的に検討するようにしましょう。

下請業者(使用者)への請求

下請業者は、労働者に対して、労働契約法5条に基づく安全配慮義務を負っています。

この安全配慮義務違反が認められる場合、不法行為法上の注意義務違反(709条)も認められるのが一般的です。

そこで、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求や不法行為に基づく損害賠償請求を行っていくこととなります。

元請業者への請求

元請業者と下請業者の労働者との間には直接の労働契約は存在しません。

しかし、安全配慮義務とは、「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきもの」(最高裁判所昭和 50年2月25日第三小法廷判決)とされていますので、元請業者と労働者との間に「特別な社会的接触の関係」があれば、信義則上、元請業者も労働者に対して安全配慮義務を負うと考えられます。

したがって、「特別な社会的接触の関係」を立証することによって、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償を請求することが出来ます。

また、元請業者のうち、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているものについては(これを「元方事業者」といいます。)、労安衛法を遵守させるために関係請負人およびその労働者を指導し、違反是正の指示をなす義務があります(労安衛法29条)。

したがって、元方請負人については、労安衛法の違反是正措置を講じていなければ、安全配慮義務違反として、下請業者の労働者は、元請業者に対して損害賠償請求をすることが出来ます。

もっとも、これら安全配慮義務や不法行為法上の注意義務の有無については、複雑な検討と資料の精査の上での主張・立証が不可欠となりますので、一度弁護士にご相談してみてはいかがでしょうか。

労働災害で後遺障害を負われた方へ

労働災害により後遺障害を負われた方は、労災保険により障害(補償)等給付を支給してもらうことが出来ます。

しかし、労働災害による後遺障害の有無の認定は労働基準監督署が行いますので、必ず労働災害による後遺障害と認定してくれるとは限りません。

非該当と判断された場合、労働者災害補償保険審査官へ審査請求を申し立てることで、再度審査を受けることができますが、一度出た認定を覆すほどの資料準備等は容易なことではありません。

また、障害(補償)等給付の請求時、適切な資料提出が出来ないと、実際の症状から認定されるべき障害等級より低い等級で認定される可能性もあります。

さらに、使用者や元請業者への慰謝料請求には、注意義務違反や安全配慮義務違反の立証という専門的知識が必要となります。

このような場合、専門的知見を持った弁護士のアドバイスをもらうことは大切です。

弊所には、労働災害に精通した弁護士が在籍しておりますので、後遺障害の申請をご検討の方におかれましては,せひご相談ください。

労働災害でご家族を亡くなられた方へ

労働災害によりご家族を亡くされたご遺族の悲しみは大変大きなものです。

また、亡くなられた方が、一家の大黒柱であった場合なども少なくありません。

このような場合に備えて、遺族(補償)等給付という制度が準備されていますので、必ず請求するようにしましょう。

しかし、遺族(補償)等給付の請求には、受給順位や要件など細かなルールが存在するため、専門的な知識が必要となる場合も少なくありませんし、請求のための書類の準備も複雑です。

さらに、元請業者や使用者に対して、安全配慮義務違反や不法行為を理由として、慰謝料や逸失利益(将来得られるはずだった利益)を請求することも出来ますが、慰謝料額等の示談交渉をするにしても、訴訟を行うにしても、元請業者や使用者という会社組織を相手に戦うことは並大抵の事ではありません。

弁護士は示談交渉や訴訟に精通していますし,複雑な資料の精査も日常業務として行っていますので、ご依頼いただけば、迅速に解決することが出来ます、

弊所には労働災害に精通した弁護士が在籍しておりますので、ぜひ一度ご相談ください。