労災事故で怪我をした場合の逸失利益とは?また、その金額は?【弁護士が解説】
A.後遺障害の逸失利益とは、労災事故によって後遺障害が残った場合に、将来の収入が喪失・減少してしまったことによる損害のことです。金額は基礎収入、労働能力喪失率、労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数から計算します。
後遺障害とは
労災事故によって、重篤な怪我を負い、治療をしたにもかかわらず残存してしまった一定以上の障害を後遺障害といいます。
労災事故の場合、第1級から第14級までの障害等級が定められており、被災労働者からの障害(補償)給付の申請を受けて、労働基準監督署が障害等級を認定します。
どのような後遺障害がどの障害等級に該当するのかは、労働者災害補償保険法施行規則別表に詳細に定められています。
後遺障害による逸失利益
後遺障害が残存してしまうと、多くの場合、労災事故に遭う前に比べて労働能力が損なわれ、以前と同じように稼働して収入を得られなくなってしまいます。
つまり、後遺障害によって労働能力が低下すると、将来にわたっての稼働収入が喪失・減少してしまうことになります。この喪失・減少した利益(収入)を逸失利益といいます。
どのような障害によって、どの程度労働能力の減少をもたらすのかという一応の目安が、障害等級ごとに「労働能力喪失率」として定められており、それに従って、逸失利益を算出するのが一般的です。
例えば、脊髄損傷により下半身不随等になり、障害等級第1級が認定され、働くことができなくなった場合、労働能力喪失率は「100%」とされています。
また、機械に巻き込まれるなどの労災事故に遭い、骨折して治癒した後も右手関節(手首のこと)の可動域が、健常な左手関節の2分の1以下になって障害等級が第10級と認定された場合、労働能力喪失率は「27%」とされています。
逸失利益は、一般的には(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)で算出されます。
例として、年収400万円だった方が労災事故に遭い、障害等級10級の認定を受け、事故の当時40歳だった場合、
(労災事故前の年収)400万円
(労働能力喪失率)27%
(労働能力喪失期間(※1)に対応する係数(※2))18.3270
逸失利益は「1979万3160円」となります。
※1 原則として、67歳までの年数です。
※2 令和6年現在の法定利率3%を前提として、27年間に対応するライプニッツ係数は18.3270です。将来にわたって発生する収入の減少を一時金として算定しなおす際に中間利息を控除するため、ライプニッツ係数を乗じて計算されます。
ただし、後遺障害が残ったとしても労働能力の減少が認められず、逸失利益も認められない場合もあります。
また、上記は一応の目安であり、障害等級に定められている労働能力喪失率よりも高い又は低い喪失率が認められることもあります。労働能力喪失期間等についても同様に、個別具体的な事案によって、上記基準と異なる期間になることがあります。
損害賠償請求ができる場合
労災事故の発生について、勤務先の会社等(事業主)にも責任があれば、労働者は労災保険では補填されない損害である、
①慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)
②逸失利益のうち、労災保険によって補填されていない部分
③休業損害のうち、労災保険によって補填されていない部分
等の賠償を請求することができます。
労災保険給付である障害(補償)年金または障害(補償)一時金は、逸失利益を補填する性質を持ちますが、通常、逸失利益を完全に補填するほど十分なものではありません。
一方、労災事故の発生に責任がある勤務先の会社等(事業主)は、逸失利益を含めた上記損害を賠償する責任を負います。
つまり、逸失利益を含めた全損害を回復するためには、通常、勤務先の会社等(事業主)に対して損害賠償を請求することが必要となるのです。
もっとも、被災労働者自身で勤務先の会社等に対して損害賠償を請求するのは難しいと感じられる方も多いでしょう。
また、労災事故に関する資料の収集も、どのようにすればいいのか分からないという方がほとんどだと思います。
労災問題に精通している弁護士にご相談いただければ、個別の事案に即した具体的なアドバイスを受けることができます。
また、勤務先の会社等に対する損害賠償請求については、法的な根拠に基づいた主張や反論が必要となることもしばしばありますが、このような勤務先の会社等に対する請求についても、弁護士に依頼をすれば、代わりに行ってもらうことができます。
労災事故に遭われてお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。